新たな感性を加えて
いただいたお着物をご自身のお着物へと。
近年よくご相談を承るリフォームですが、丸洗いのみで他には何も手を加えずにお召しになれる方は少数派で、殆どの場合、洗いと寸法直しが必須のことが多いですね。
いつもお世話になっているT様がご持参くださったのは、紫の無地の総絞りのお羽織です。
お気に入ってらっしゃるものの、シミがあり、丈も長くとのこと。
採寸いたしましたところ、裄、袖丈とも短く、袖の丸みもお好みではございません。
解いて洗張りをし、お仕立て直しすることとなりましたが、下前身頃の目立つシミは、洗張りでは取れないだろうと思われます。
そこで、シミを隠すために刺繍で柄を入れることとなりました。
また、羽織丈を長めにお直しする場合、羽裏も長さが足りず、お取替えになる場合が多いですね。
本品も残念ながら、新たにご用意させていただくことに。
羽織地と同じ紫色でシンプルに染め上げた吹き寄せ柄の羽裏をお気に入っていただきました。
洗張りし、一反の反物に戻します。
さて、刺繍の柄はどのようにいたしましょう。
極力シンプルに、がT様のご要望のイメージ。
そこで、羽裏柄とリンクした松葉や梅、楓などの吹き寄せを、大人っぽく、白を主体に彩りの金糸を加え、刺繍することになりました。
様々な吹き寄せ柄を、数種類の大きさで概略の図案を作り、羽織に載せて、位置や大きさを吟味してまいります。
最も目立つ下前身頃にあった大きなシミには梅と銀杏の吹き寄せを、
シミ以外の部分にもバランスよく、しかし最小限に、吹き寄せ柄を加えることにいたします。
左袖口の楓、キュートでございますよね。
ちらちらっと、ご自身から見える位置に可愛い柄があるとモチベーション上がりませんか?
後ろ身頃にはシミが無かったので、背に洒落紋をお入れすることに。
吹き寄せ柄をデザインさせていただきます。
刺繍を入れ、お仕立て上がり、新しく生まれ変わりました。
羽織丈は背から2尺4寸5分、と充分ですね。
T様、ご依頼いただきまして誠に有り難うございました。