織物
爽やかな風と優しい光が差し込んでいた勝山健史氏の作品展に於いて、その布を眼にしてはもはや立ち去れないであろう、ひときわの印象を放つ魅惑的な布。
勝山健史作着尺「有水羽絹・入子菱」をご紹介いたします。
見惚れてしまう位の小さな入子菱の地紋が並んでいます。
お色は、とお尋ねいただきますと、薄藤鼠色と申し上げますが、
光線の加減によってその魅せる表情や色合いは様々に変化し、私達を魅了するのです。
暗い会場では、光を放つ魅惑的なお着物に、
自然光では、仄かに赤味を感じる薄いグレイ色や霞色に、
ライティングにより魅せるお色が違いますから、お召しいただく度に新しい感動に巡り合えますね。
フラットな無地ではなく無数の色や段で彩られ、身にまとっていただいた時のその艶感やドレープ感は、極上の無地へと誘うことでしょう。
有水羽絹の背景には多くのストーリィが存在しますが、とにかく、シンプルに美しい。
それで充分なようにも感じますが、2021年、「勝山織物株式会社 絹織製作研究所 代表」でらっしゃる志村明さんは「在来絹製作」の選定保存技術保持者として認定を受けられました。
正倉院御物の染織の時を経て尚色褪せないその素晴らしさ。
現代では、効率を重視し多くの着物や帯が作られ、和装に於いても多くの恩恵を得ましたが、本当に美しいもの、永年かけて受け継いでゆく価値のあるものが出来たのかどうか。
先人のように、お蚕さんに最大の敬意を払い、染め、織らせていただく。
その勝山さんの答えが、有水羽絹(うすはぎぬ)なのでしょう。
勝山健史氏曰く
「育ててあげてくださいね。」
華がある布は、必ず貴方の糧となり、引いては自信に繋がります。
素晴らしい人生を共に彩るパートナーとして、様々なシーンでお召し下さい。
■ 有水羽絹(入子菱) 勝山健史
- 蚕品種:あけぼの
- 経糸: 塩蔵 生糸
- 緯糸: 塩蔵 灰汁練
- 染:五倍子
- 織:四枚綾織 菱
- 仕上げ: 湯洗 水洗 砧
●品切れ