訪問着
織物
センピオーネ公園に白い真綿がはらはらと舞っていた風景。
その印象的な景色を着物に織り上げた、小島秀子さんの素晴らしい訪問着です。
地色は、深く、靜かな泥染めの黒にも近しい焦げ茶色です。
白のドットが、はらはらと舞っていた真綿で、半円弧はその繋がりを表現なさっているのでしょうか、横段で表された二藍や菊塵色、青碧、錆色などのニュアンス溢れる寒色系の色遣いも抜群ですね。
綾織りの匠の表現もさることながら、イタリアらしいお色のセンス、素敵です。
対峙した時には、その深い色合いと柄の彩りに目と心を奪われるのですが、こうして画像を前にじっと観察すると、地色にも何層にも色の重なりが在ることがおわかりいただけますね。だからこそのこの深い色合いです。
そして、そのお色の深みや柔らかい風合いは、極上の糸あってこそ。
恩師である柳先生から勧められた入金真綿という、今はもうない特別な真綿糸を緯に、縦には三眠蚕の細く滑らかな生引きの糸と座繰り糸を交互に使い、この風合いが出来上がるのだそう。
手に持つだけでも素晴らしいのですから、うっとりするような着心地なのでしょうね。
沢山の作家の作品が並ぶ染織展の会場でも、ひときわ輝いていた着物を、こうして皆様にご紹介する事が出来て幸いです。
全ての工芸染織作家の作品は、その作家の生き様や思考をすくい取って出来る宝物のようなもの。
着物においては、まとえる喜びに感謝です。
小林秀子
’87年から2年連続で新人染色展技術賞受賞
2002年国展にて準会員優作賞
国画会会員
■訪問着(国画会会員 小島秀子・作 センピオーネ公園の秋)
●品切れ