染帯・刺繍帯の御誂え
子育てが一段落したころを見計らって、趣味のお茶のお稽古やボランティアにと、ご活動を始められたY様。
着物については、数は多くなくてもいいので、心から愛着が涌くような一生長く楽しめそうなお品を揃えたいのです、と仰います。
Y様のお嬢様方がスケートを習ってらっしゃることもあり、和装に於いても、スケートに関係するような着物や帯があればいいな、と漠然と思われていたそう。
市販品で巡り合う機会は少ないように思われますので、誂えであればご希望のイメージでお作り出来、決して割高ではないことをご説明し、お誂えで、染名古屋帯をお作りいただくことになりました。
さて、どんなイメージでお作りいたしましょう?
帯の地色は、スケートリンクのような氷色で決まり、です。
では柄は?
Y様は浅田真央ちゃんの大ファンで、ソチオリンピックの時の真央ちゃんが特に想い出深いそう。
そこで、その時の衣装が参考にならないかしらと雑誌のコピーをお持ちくださいました。
また、お嬢様が実際に履かれていたスケート靴もご参考にお預かりし、前腹の片側に描く事にいたします。
スケート靴は、スケートをしているからこそ分かるエッジカバーや、カバーの前後で色が違う点も忠実に描くように。
お太鼓の柄は、光のシュプールが中心から外に向かって開くようなイメージで。
ブルーをメインに赤を効かせながら。箔も使って光を放つイメージです。
花火や炎のようにも見えるお太鼓なので、前腹にカクテルグラスもいいかも、と思ったのですが、未成年のお嬢さまが締めることも考え、氷を入れたグラスで。
染め上がりました。
誂えならではの柄、お作りいただくからこそ御手にしていただける染帯でございますね。
前腹とお太鼓、この二つが揃ってこの帯が活き活きと物語を紡ぎます。
お仕立て上がりました。
この帯とご一緒に水色の無地着物も誂えていただきましたので、コーディネートでお召しいただきますと、フィギュアファンには、心にぐっとくるのではないでしょうか。
「いつか、アイスショーを見に行く時にも着てゆきたいわ。」と仰います。
冬デビューの予定でしたが、一足先に、9月のお出かけに際してこの帯を結んでいただきました。
「どうしてスケート靴?」と皆様も興味津々のご様子だったとか。
御手に持ってらっしゃるのは、真央缶のテディベア。テディベアのお衣装に、ご注目下さいませ。
記念のツーショットでございます♪
お誂えは、着物の愉しみの中でも特別で、無事お気に入ってくださった時の歓びは、何にも替え難いものです。
「着物って素晴らしいですね。半年前には、こんな楽しみに巡り合えるとは思いもしなかった。」
そのお言葉を聞かせていただくだけで、私共も職人もまた頑張ろう!と力が涌いてまいります。
お客様の歓びが、全ての仕事の原動力。
ご用命いただきまして、本当に有り難うございました。