工房探訪
これが木綿?
初めて築城先生の作品を拝見した時に受けた感動は今でもはっきり覚えています。
何しろ、あの築城先生の作品が畳2枚分位のスペースに20余点はあったでしょうか。
今では考えられない位、贅沢な空間ですね。
どの作品も素適でオトコマエの縞ばかり。
一瞬で魅了されたのでした。
縞は奥が深い。
縞の大きさや色の取り合わせ等々で無限の広がり、宇宙を感じませんか。
一見単純に見えるものほど奥が深いのはどの世界でも同じですね。
築城先生の縞には、潔さや知性、オーラを感じるのです。
是非工房にお伺いしたいと思い、
それが叶ったのは2012年の未だ寒い初春の頃でした。
のどかな景色が広がります。
工房には、先生の許で修練を積みながら、
縞に取り組むお弟子さんも。
トン、トン、とリズムよく響く筬の音が心地よい空間です。
一つの帯に2300本もの数の経糸(たていと)が使われています。
まるで絹のように滑らかで艶のある面は、こうして生まれるのです。
築城先生に丁寧にご説明いただきました。
草木染された糸のストックの前で。
「大切な梅」と書かれた糸。
当たり前ですが、同じ木でも年により時期により得られる色は変わります。
毎年その時期に染めても、ここまで綺麗な色はなかなか出ないとか。
一緒に写っている糸も梅から得られたもの。他の梅と較べても確かに発色が違いました。
お忙しい中をご丁寧に説明していただき、嬉しく貴重な時間をいただきました。
お食事をご一緒しながら、
ところで先生、作品を生み出す上で一番大切になさっていることは何ですか、
とお伺いいたしましたら、「自由な発想です。」と。
小倉織を復元した先生ですから、
その伝統や伝承は大切にしながらも、
「守るだけでは伝統は続かない、自由でないと駄目なのよ。」と。
とても印象に残るお言葉を頂戴したのです。
平素、オリジナル作りで職人さん方とお仕事をさせていただく機会が多い私達ですから、その言葉に職人さんとの違いの本質を感じたものでした。
オリジナル制作に於いては、図案を考え、加工技法を検討し、それを最適な職先にお願いするのは私達の仕事です。
しかし、案を充分練ったものでも、職先次第で出来上がりが違ってくるのが伝統工芸の世界。
だからこそ、熟練の職人さん方にはいつも深く感謝する毎日なのですが、ストイックに真摯に作品に向き合う姿勢は同じものの、それを越えるクリエイティブと創作に邁進する作家さんと、発注された仕事でベストを尽くす熟練の職人さん。
どちらが欠けても私達は成り立たないなと、改めて感じた旅でございました。